木材に息吹を吹き込む:レーザー彫刻の魅力と精緻な技術

木材に息吹を吹き込む:レーザー彫刻の魅力と精緻な技術

ヒノキをレーザー彫刻

コンピュータで作成したデザインデータを、レーザー光を用いて木材などの素材に直接彫り込む、まさに「デジタル彫刻」とも呼べる手法です。今回は、主にヒノキや杉といった木材へのレーザー彫刻に焦点を当て、その魅力、製作工程、そして可能性について詳しくご紹介いたします。


 

レーザー彫刻の特性と木材への適応

国産の杉材にレーザー彫刻

レーザー彫刻の最大の特長は、デジタルデータに基づいた精度の高い加工が可能な点にあります。しかし、木材という天然素材を扱う上では、その特性を理解することが非常に重要です。木材は一本一本、そして同じ木材の中でも、硬さや木目にばらつきがあります。このため、レーザーが木材の硬さを自動で認識することはできません。結果として、彫刻の深さにムラが生じることがありますが、これがかえって手彫りのような温かみや、木材本来の表情を引き出す「味」となることも少なくありません。

特に、厚さ12mmの杉材を幅400mm×縦100mmに電動糸鋸で加工する際、レーザーカットが難しい場合があります。レーザーによる木材のカットは可能ですが、厚さ6mm程度であれば非常に美しく仕上げることができます。カット面、いわゆる切り口はレーザーの熱によって焦げ付き、特徴的な茶色に変色しますが、これも木製品ならではの風合いとして楽しめます。例えば、弊社で製作する木製名札には、厚さ約6mmのヒノキ材を使用しており、この厚みがレーザー加工に最適であることを示しています。


 

精密な製作工程:ヤニ対策から「焼目付け」まで

レーザー加工機による焼目付け

レーザー彫刻の工程は、単にレーザーを当てるだけではありません。高品質な仕上がりを実現するためには、いくつかの重要な前処理と後処理が必要となります。

まず、レーザー彫刻を行う前に、木材の表面に和紙アプリを貼るという工程があります。この和紙アプリは、ステッカーやカッティングシートを貼る際に使われるマスキングテープのようなもので、レーザー加工時に発生する木のヤニが表面を汚すのを防ぐ役割を果たします。ヤニは木材の種類や加工条件によって発生量が異なり、そのままにしておくと製品の美観を損ねてしまいます。この和紙アプリを貼ることで、彫刻部分以外の表面をきれいに保つことができます。

さらに、この和紙アプリは、後の工程で「焼目(やきめ)」を付ける際の保護材としても機能します。焼目とは、焼印のように文字やデザインの輪郭部分を意図的に焦がすことで、よりくっきりと目立たせる技法です。レーザー彫刻だけでも文字は少し茶色くなりますが、焼目を施すことでコントラストがはっきりし、視認性が格段に向上します。

彫刻作業においては、木材の特性に合わせてレーザーの出力やスピードを調整します。例えば、杉材のような比較的柔らかい木材には、弱めの出力で慎重に彫刻を行います。彫り具合を確認し、必要であれば再度彫刻を施すことで、最適な深さを追求します。

そして、この焼目付けこそが、レーザー彫刻の仕上がりを一段階引き上げる重要な工程です。焼目付けを行う際には、意図的にレーザーの焦点をずらして照射します。これにより、レーザー光が太くなり、彫刻部分の周囲がより深く、濃いこげ茶色になります。この工程によって、製品全体のグレードが格段に向上し、より高級感のある仕上がりとなります。焦点をずらすことで、彫刻部分からはみ出して焼目が付くことがありますが、ここで先述の和紙アプリがその役割を果たし、余分な焦げ付きから木材の表面を保護します。また、焼目付けの際にもわずかに彫り込みが進むため、彫刻時の深さが多少浅くても調整が可能です。


 

仕上がりと耐久性、そしてカスタマイズの可能性

杉材の社名プレート

これらの工程を経て完成した木製製品は、彫刻部分が美しいこげ茶色に仕上がり、木材本来の温かみとデジタル彫刻の精密さが融合した、唯一無二の存在感を放ちます。

さらに、ご要望に応じて色入れを行うことも可能です。色を入れることで、製品の印象は大きく変わり、よりインパクトのあるデザインに仕上げることができます。社名プレートのように、会社の顔となるアイテムには、木製プレートの持つ温かみと、レーザー彫刻によるシャープな表現が非常にマッチします。

耐久性についても考慮されており、撥水効果のある水性ステインを塗布することで、多少の水分は弾くことができます。しかし、基本的には屋内でのご使用をおすすめします。屋外での使用も可能ですが、紫外線が直接当たる場所では劣化が早まる可能性がありますので、日陰での設置や定期的なメンテナンスが望ましいです。


 

価格と納期、そして木材の選択

 

参考価格として、厚さ12mmの木製社名プレート(50mm×270mm)のレーザー彫刻品は、1枚あたり3,000円(税別)から承っております。焼目付けをご希望の場合は、別途500円(税別)が加算されます。製作期間は通常1週間程度で、ご発注後10日以内にはお手元にお届けできるよう努めております。複数枚の製作をご依頼いただく場合は、単価を抑えることも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

木材の選択も、製品の仕上がりに大きく影響します。主にヒノキと杉を使用しておりますが、それぞれ異なる特性を持っています。

  • ヒノキ:杉よりもやや硬質な印象があり、きめ細やかな木目が特長です。木製名札など、繊細な表現が求められる製品に適しています。しかし、幅が広い一枚板の入手が難しいため、幅100mm程度のサイズが加工の限界となる場合があります。

  • :比較的柔らかく、大きな一枚板も入手しやすいのが特長です。その分、より大きなサイズのプレート製作にも対応可能です。

どちらの木材も、天然素材であるため、一点ごとに異なる木目や表情を楽しむことができます。レーザー加工の観点から言えば、木目が少ない方が彫りの深さが安定しやすいため、より均一な仕上がりを求める場合には考慮すべき点です。もしご希望のサイズで一枚板の入手が難しい場合は、集成材を使用することも可能です。集成材は、複数の木材を接着して作られるため、より大きなサイズや安定した品質の材料を提供できます。


 

高度な技術と細やかな配慮:品質へのこだわり

 

高品質な製品をお届けするために、細部にわたる配慮と技術が注ぎ込まれています。

レーザー加工の前に、木材の表面を紙ヤスリで丁寧に研磨し、滑らかに仕上げます。これは、和紙アプリの接着を良くするためだけでなく、最終的な製品の見た目の美しさにも直結するため、非常に重要な工程です。

また、小さい文字を彫刻する際には、彫りの深さを調整する技術が求められます。深く彫りすぎると文字が欠けてしまう可能性があるため、少し浅めに彫刻することで、繊細な文字でも鮮明に表現することができます。

レーザー彫刻と焼目付けが完了した後、穴あけや周囲のカットを行います。カット面は焦げ付きますが、加工後に紙ヤスリで丁寧に研磨し、焦げをきれいに除去します。お客様のご希望に応じて、焦げを残すことも可能ですので、お好みに合わせてお選びいただけます。


 

持ち込み商品への名入れ:多様なニーズに対応

釣り用品の網に名入れ彫刻

弊社では、お客様が持ち込まれた商品への名入れ彫刻も承っております。先日も、魚釣りに使用する網の持ち手部分にレーザー彫刻で名入れを行うご依頼をいただきました。このような変形した持ち込み品への加工は、非常に高度な技術と慎重さが求められます。木材の種類が不明な場合や、形状が複雑な場合は特に、失敗が許されないため、細心の注意を払って作業を進めます。

具体的には、特殊な方法で四点から中心を出し、そのサイズ内にレーザー彫刻を行うことで、形状の歪みに対応します。レーザー加工機は多様な形に対応できる汎用性を持っていますが、もちろん限界もあります。

持ち込み加工の際には、まずマスキングテープを加工サイズにカットし、加工位置に正確に貼り付けます。これにより、彫刻位置を正確に定め、材料への影響を最小限に抑えながらテスト彫刻を行うことが可能です。マスキングテープの四隅角をレーザー加工機に読み込ませることで、彫刻位置をミリ単位で調整し、精度の高い加工を実現しています。木材の種類が不明な場合は、弱めの出力から始め、徐々に調整しながら最適な条件を探っていきます。

釣り用品の網に焼目をつける

彫刻後には、同じデータを用いて焦点をずらし、焼目付けを施します。このようにして、持ち込み商品にもお客様の想いを込めたパーソナルな名入れが可能です。お客様に喜んでいただけるよう、一つ一つのご依頼に真摯に向き合い、最高の品質を目指しております。持ち込みでの名入れをご希望の場合は、事前に写真をお送りいただければ、対応可否を判断させていただきます。

釣り用品の網に名入れ彫刻


 

デザインデータとお問い合わせについて

 

レーザー彫刻をご依頼いただく際に、イラストレーターのデータをお持ちの場合は、メール添付またはファイル転送サービスにてお送りください。データをお持ちでない場合でもご安心ください。デザインに入れたい内容や、参考となる写真、イラストなどをメールでお送りいただければ、弊社でデータ製作を行います。手書きの原稿からでもデータ化が可能です。

基本的にデータ製作は無料で承っておりますが、製作に長時間要する複雑なデザインの場合には、別途データ製作費をいただく場合がございます。その際は、事前に必ずご連絡し、ご納得いただいた上で作業を進めさせていただきます。

レーザー彫刻に関する詳細情報やお問い合わせは、下記の弊社ホームページに掲載しております。

福岡のレーザー加工 https://seri-graphie.com


 

まとめ

 

レーザー彫刻は、木材の温かみとデジタルの精密さを融合させる、非常に魅力的な技術です。社名プレート、名札、料金表、会員登録証など、様々な用途でオリジナルの木製製品を製作することが可能です。

ご興味をお持ちいただけましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。お客様のイメージを形にし、唯一無二の製品をお届けできるよう、誠心誠意対応させていただきます。

 

投稿者: SERIGRAPHIE

捨て看板やアルミ複合板看板の製作とポスターやステッカーなどをインクジェットで印刷します。 レーザー加工機で木とアクリルを彫刻して社名プレートや名札を製作しています。それと画用紙に写真を彫刻して切り絵にしております。 ダンプラ、ポリセームにシルクスクリーン印刷します。

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